2003~2020年度の川崎医科大学衛生学の記録 ➡ その後はウェブ版「雲心月性」です。
川崎医科大学 同窓会報 副会長の退任挨拶 
2012年3月31日
第11回分子予防環境医学研究会を主催して
川崎医科大学 衛生学 大槻剛巳
列島全体をこの冬一番の寒波が襲った2012年1月27~28日,川崎医科大学同窓会からの助成を受け,倉敷市民会館2階第会議室にて第11回分子予防環境医学研究会を主催いたしました。
この研究会はその開設主旨から抜粋しますと「既存の社会医学系学会は十分な対応がとりきれておらず,若い世代の結集と育成が十分にできていない。ここに,新しい研究会組織を組織し,分子予防医学研究の交流,研究/教育の方向,若手研究者の育成,学会組織のあり方などについて卒直な意見交換を行うことは危急の課題と考え,分子予防環境医学研究会を設立した。」というものであります。
IL-8を発見された東京大学分子予防教室の松島教授やRbを発見された京都府立医大の酒井教授,最近ではもやもや病の責任遺伝子の発見をされた京都大学の小泉教授などが中心メンバーとなっておられて,大槻も第2回研究会から参加し,今回会長を務めることを仰せつかりました。
今回のポスターを紹介します。
テーマには「春告鳥が啼く頃には・・・―分子予防環境医学の明日を見つめて―」としました。明日を見つめているような写真をポスターに使ったので,決めたテーマです。

特別講演では,岡山大学泌尿器科の公文教授に『固形がんに対する遺伝子治療の最前線「REIC遺伝子医薬を中心として」』というタイトルで実施hしていただきました。この研究会は元来は予防医学・衛生・公衆衛生・健康科学という分野の研究者の集まりなのですが,だからこそ普段聞けない臨床治療の先端である遺伝子治療の話と考えたのです。ここ3年ほど,大槻が大学内で産学官連携の担当をしていることで,県内の種々の研究会において,公文教授と親しくなる機会を得ていたこともあって,ご依頼した次第でした。実際のご講演では本邦における遺伝子治療の歴史から始まって,現在,臨床試験を展開されている岡山大学の発見によるREICという遺伝子による前立腺癌の治療についても言及していただきました。実験的に癌細胞の死滅とともに,生体の有する抗腫瘍免疫の賦活化といった側面にも言及され,これは癌の治療のみならず予防においても,癌細胞を早期に死滅させる手段の構築,あるいは生体の免疫力の検討からの癌予防にとっても非常に有用な講演となりました。
京都大学放射線生物研究センター高田教授・茨木大学理学部田内教授,国立がんセンター研究所河野分野長によるシンポジウム(DNA損傷への応答メカニズムと疾患),さらに一般演題が30題が発表され,熱心な討議が行われました。高田先生は,2000~2006年,川崎医科大学の免疫学の教授をお務めで,現在京都大学にいらっしゃいます。今回主催することもあって,やはり特別講演同様,普段は聞けない話を,それに高田先生がテーマとされているDNA傷害とその修復というのは放射線による生体影響にもつながり,時期的にも良いのではないかと考えて,昨年夏頃には,高田先生に連絡を取った次第でした。シンポジウムの「DNA損傷への応答メカニズムと疾患」については,ゲノムDNAの安定性が生命維持に必須であることから,特に放射線曝露などによって生じるその損傷と,それに対する生体反応系としての修復機構に関連する遺伝子群について,それぞれの演者がファンコニ・NBS1・そしてクロマチンリモデリングに関連する遺伝子について発癌なども含めた意義を紹介されました。これらの知識は,予防医学を分子レベルで考えるにおいて非常に貴重な講演であったと感じられました
さらに一般演題についても,ダイオキシンやいわゆる環境ホルモン,さらには有機溶剤,アスベスト,ナノチューブなどの環境中の有害物質の生体影響について,神経系,発癌,免疫系等への影響について最先端の知見が紹介されました。また発癌の分子予防についての食品成分の利用についても,分子機序が明らかになってきていますし,生活習慣病と遺伝子多型では,広く生活習慣病全体について解析が進んで行っている事実が明らかになり,より広範な観点からの分子疫学の必要性を感じさせられました。さらにもやもや病や神経変性症の責任遺伝子の同定は非常に貴重な発表となりました。
 
若干,予想した参加者よりも少なかったのですが,密度の濃い討論の充実した研究会になり,こういった領域のコアメンバーが集まって,それぞれの研究成果を紹介しながら予防医学の明日を目指すという分子予防環境医学研究会自体の主旨に合致した研究会であったと考えられました。

次年度以降も,本年度の発表を更に進化させた研究が披露され,これによって種々の疾患に対しての分子機序を主体とした予防方策の展開が期待されるところです。

さて,今回は,研究会の会長である東大・松島先生から「倉敷」で,というリクエストでした。岡山で実施すれば,会場なども簡単なのですが,それではどこの都市で行う研究会でも同じになっちゃいます。なので,倉敷にこだわりました。芸文館を最初狙ったのですが,倉敷中央病院の麻酔集中治療関係の学会とバッティング!なので,市民会館でした。まぁ,いずれにしても美観地区にも近いし,大原美術館もすぐだしって,今年は予測より若干参加者が少なかったのですが,その中でも,散策に行かれる方もいらっしゃって・・・でも,それはそれで倉敷の想い出を作っていただいたのならOKって考えておりました。残念だったのはアイビースクエアが回収で,入れなかったこと。いくつかのテナントなども入っているし,蔦と赤レンガの風情もよかったのにと,ちょっと残念でした。
そして,懇親会は・・・まぁ最初は立食パーティーも考えていたのですが,場所が撮れなかったのもありましたが,寒い冬だしいっそ居酒屋でって思って,みかん地区の「つね家」さんにしました。二階の座敷を二間,借りきりにして皆さん,しっかり座って・・・ということで,実は非常に盛り上がりました。やっぱり,腰を下ろすと日本酒や焼酎なども進みますし,しばらくすると,皆,うろうろと最初にどこに座っていたのかわからない状況にもなって・・・・通常,学会を主催すると懇親会では,ピアノの弾き語りをしてきたのですが,今回は,さすがに座敷では出来ない・・・と思ったら,京都府立の酒井教授からのリクエストでミニ創作落語をするはめに・・・いやぁ参りました・・・1.5年ほど前に作ったもので,記憶がさだかでもなく・・・途中チリながらの演目でしたが「夏の胡瓜」,楽しんでいただけたでしょうか(一応,最後のオチで笑いは取りましたよ)。

さて,この辺りで,この報告書も「お後がよろしいようで~」って終了してもいいのですが,もう1点。

前日には,幹事会を兼ねて,招宴を催します。今回は,その食事を「吉井旅館」さんで行いました。今,吉井旅館の「おかみさん」,倉敷市二子のノートルダム清心高校に居ってらして,そういえば附属高校の頃には,僕らの世代では,結構,清心の女子高生さんたちとの触れ合いもありましたよね! まぁ,ここでの記載はここまでにさせていただきますが・・・(苦笑)。

幹事の先生方にも非常に好評で・・・またビールは地元の「倉敷麦酒」,そしてお酒も「吉井吟醸」で,本当に皆さん,楽しい時間を過ごして頂けましたし,倉敷ならではの佇まいで,よかったと思いました。

では,本当に「お後がよろしいようで~」

最後に抄録集の表紙を紹介して,項を終えたいと思います。

本当に助成をありがとうございました。